9795 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/05(火) 22:59:56 ID:kjBrg3AE0
,,..-''"´ ̄ ̄"''-,,
/ -..,,_ '., 青年の名前はやる夫。何処にでもいる平凡な男、では無い
../ -‐t.j-`''‐ _,,..-.',
,' `゙'' .‐t.j-、l 幼少期から勤勉な姉と今時珍しい硬派な父の教えもあり
l r''´ ヽ`゙'' |
', `t'´`j-'′ ,' 幼いころから近所の友達と遊んだり、掛け算の勉強にも精を出していた。
\  ̄ /
.`l-―――‐-..,,__ /
___|_:::::::::::::::::::||::::|
r:ヽ"´:::::::::::::::::::::::::::::::::::',o└-..,,__ 「子供は風の子、と言う訳で公園いってきまーす!」
/::::::',::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::ヽ、
./::::::::::::/ ̄ ̄l`゙l::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::|:|
../::::::::::::/  ̄ヽ┘::::::::::::::::::|o::::::::::::::::|::|
/:::::::::::/ . ̄ヽ|::::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::|:::|
9800 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/05(火) 23:03:50 ID:kjBrg3AE0
____
/ \ 特に乱暴なガキ大将でも無く、物静かな子でも無かった
/ \ 逆に公園で一人で砂遊びしていた子を無理矢理輪の中に
/ ⌒ ー \ 放り込んだりしては子供なりに楽しく過ごしていた
| (●) (●) |
\ (__人__) / 「ほら、砂場で遊んでないでこっちで鬼ごっこして泥まみれになろうやぁ」
/ `⌒ ´ イ`ヽ、
, ' ` ̄ \ 「えっ、あ、うん……」
9802 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/05(火) 23:09:36 ID:kjBrg3AE0
そんな幼少期、突然彼に妹が出来た。
もちろん、親御さんが頑張った訳でも無ければコウノトリがキャベツ畑から運んできた訳でも無い
簡単に言えば、事故で両親が他界し、身寄りが無くなった子を姉である母が引き取ったのだ。
/ ̄ ̄ ̄\
/ \ 「そうそう、今度うちの姉貴の子引き取るからね。あなたお兄ちゃんよ」
/ ─ ─ ヽ
| (●) (●) | 「妹が出来るの? あーうん、そうなんだ……」
\ ∩(__人/777/
/ (丶_//// \
____
/ \
/ ─ ─\ 「お姉ちゃん? なんでそんなに喜んでるの?」
/ (●) (●) \
| (__人__) | 「新しい家族が出来るんだぞ? 嬉しいに決まってるだろ?」
./ ∩ノ ⊃ /
( \ / _ノ | |
.\ “ /__| |
\ /___ /
9806 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/05(火) 23:15:06 ID:kjBrg3AE0
数日も立たずに、彼の家には新しい同居者が来た。可愛らしいフリフリのレースをあしらった子供服に身を包んだ女の子。
自分より一個年下だという事を知った時はどう接していいか分からず少し驚きを感じたが、実際会ってみるとそうでもなかった。
ただ、ちょっと元気そうな子だな。そんな印象しかなかった、所詮子供の頃の感覚ではこの程度だろう
実際のところ、それまでの青年は何一つ姉妹との劣等感を感じる事も無ければ、自分の学の無さを恥じる事も無く
ただ幼い妹と、お姉ちゃん風吹かす彼女の後を着いて行くだけだった。
____
/ \
/ ─ ─ \
/ (●) (●) \ 「子供の頃って容赦なく蟻の脚も千切ってたね」
| (__人__) |
\ ` ⌒´ ,/
/⌒ヽ ー‐ ィヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ / r─--⊃、 |
| ヽ,.イ `二ニニうヽ. |
9811 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/05(火) 23:21:11 ID:kjBrg3AE0
さて、そんな順風満帆に見えた彼の人生にも小さな綻びが見え始めた。時期は小学校、高学年に上がった時の事だ
幼稚園から上がってきた友人たちと昼休み、教室でかいけつゾロリを読みながら雑談をしていると、とある児童が言った。
「君のお姉ちゃんと妹ってさ、すごく綺麗だよね。」
ただ純粋な言葉だ。悪意も無ければ咎めるつもりも無い。他愛のない日常的な会話だったが……この一言が、全てのきっかけだった
今思い返してみると、あの頃の自分はなんと純粋な心を持っていたのかと心の底から褒めてやりたかった。なんでそんなに無頓着なのか、と
____
/ ― \
/ (● ) ヘ\ 「そうかな? けっこう家だと玩具とか洋服とか取り合って喧嘩してるよ?」
| (⌒ (● ) |
ヘ  ̄`、__) |
ヽ |
, へ、 _/
| ^ヽ
| 1 |
9816 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/05(火) 23:33:54 ID:kjBrg3AE0
ある日、体育館で表彰式が行われた。1年生から6年生まで全児童が一斉に集まったホールではザワツキが収まる事が無く
泣き喚けば喧嘩もあり。ガキの甲高く酷い喧騒を拍手として始まった表彰式で舞台に上がったのは……自分の姉と、妹だった
「彼女たちは、今回のテレビ局が主催となって行われた読書感想文発表会で大変優秀だと………」
眼鏡を掛けた校長が長々と賞状にかかれたことを声に出している。低学年の生徒は「ハゲだ」「カツラ」だの喚いていたが
高学年となると、努力してない奴らが凄いと言い、そして比べるようにその姉妹と家族である自分の方を一瞬振り向くと、不思議そうな
顔をしてじっとこっちを見ていた。ちょうどその時、喧騒に混じって何処からかぼそりと声が聞こえた。
「どうして君はあそこにいないの?」
____
/ \
/ ─ ─ \
/( ●) ( ●) \
| (__人__) |
\ ` ⌒´ /
/ ー‐ ヽ
/ `
9817 名前:名無しのやる夫だお[sage] 投稿日:2013/11/05(火) 23:35:53 ID:AmHgpsh20
うわぁうわぁ……
9818 名前:名無しのやる夫だお[sage] 投稿日:2013/11/05(火) 23:36:06 ID:1MmOPKLs0
これはきついなあ
9819 名前:名無しのやる夫だお[sage] 投稿日:2013/11/05(火) 23:36:17 ID:WE7.2FeA0
幼いって残酷だなぁ
9822 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/05(火) 23:39:32 ID:kjBrg3AE0
え? と頭の中で理解し、疑問に思う時には体育館は拍手に包まれていた。教員に急かされ、はっと我に返った自分も急いで両の手を必死に叩いた。
舞台の上では、少々恥ずかしそうに賞状を持つが、嬉しそうにはにかむ姉と、どーだと自慢するように賞を掲げる元気な妹の姿が見えた。
____
/ \ パチパチパチパチ
/ ─ ─ \
/ (●) (●) \ …………
| (__人__) |
\ `⌒´ ,/
/ ー‐ \
段から降りる姉妹と眼が合った。嬉しそうな表情をしていたのが嫌なほど記憶にこびりついて、深く印象に残っている。
青年が苦悩な日々を送るようになったのは、姉妹がちょうど華々しい賞を飾ったその日だった。
9828 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/05(火) 23:48:29 ID:kjBrg3AE0
その日から、毎日職員室前に張り出される学校の掲示板を見るようになった。なにか賞状を貰えるものは無いか?と躍起になったのだ
その日から、今まで友人たちとぐーだら過ごしていた昼休みは卒業まで図書室へと通い詰める毎日となった。
その日から、友人たちとの仲が少しだけ疎遠になり始めた。姉妹との距離は依然として変わらずだが
その日から、青年の中で、家族だった姉妹は自分への物差しとなり始めた。
____
/ \
. / \
. / ― ー \
| (●) (●) |
. \ (__人__) /
. ノ ` ⌒´ \
/´ ヽ
9833 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/05(火) 23:54:32 ID:kjBrg3AE0
読書感想文、これは学校の図書室から一番難しそうな文庫本を選んで必死に読んだ。分からない所があれば頭のいい姉に尋ねる……
などという真似は出来ず、最初は学のある友人に聞いて回っていたが、「なんでそんなこと聞くの?」と不思議そうに首を傾げられた。
すぐに辞書を引くということを覚えた彼はより一層、図書室へと引きこもるようになった。幼稚園時代からの友達が放課後に遊びに誘っても
「もうすぐ発表があるんだ。だからごめん、今日は無理」
暫くしたら遊びに行こうよと声をかける友人はいなくなったが、話し掛けてくれる幼稚園時代の友人は残った。
それでも青年は満足だった。とにかく、集中して物事に取り組める環境が出来上がったのだから
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/ (●)i!i!(●) \
| u , (__人__) |
\ .`⌒´ 〆ヽ
/ ヾ_ノ
/rー、 |
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ヽヽ〆| .|
9847 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/06(水) 00:04:41 ID:aT3RLT1w0
努力賞。友人と時間を犠牲にして、秋の発表会で得た結果がそれだった。
最優秀賞には、自分の姉の名前が大きく引き伸ばされていた。そのすぐ下の優秀賞の欄には、妹の名前が。
彼の結果は数字で表すなら10位ぐらいだろうか? 一位でも無ければ二位でも三位でも無い。
一番上の欄に誇らしげに飾られた苗字と、一番下の所にちょこっと飾られた苗字が、自分のと同じだと思うとすごく不愉快な気分だった。
順位を視れば、姉妹が悪いのではないことは一目瞭然だった。ただ自分の力が圧倒的に足りなかったのだ
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/ ヽ
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` 、 (__人_) .;/
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その後、姉妹には大きな賞状と金と銀のメダルが記念品として、校長先生から手渡しで送られた。
わざわざ全校集会で、表彰式まで催してだ
自分には、賞としてとして鉛筆が送られただけ。その日の放課後、記念品の鉛筆はコンビニのゴミ箱に捨てた
9855 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/06(水) 00:09:36 ID:aT3RLT1w0
その日の夜、青年は生まれて初めて「悔しい」という感情で涙を流した。誰にも知られないよう、風呂場の中で声も出さずに泣いた
そして考えた。どうすれば自分の誇らしい姉妹に勝てるだろうか?
「考えて考えて、とりあえずもう一度がんばってみようと考えた。駄目だったら、その次で見返してみよう」。
ちょっとずつ、彼の中で何かがズレはじめた。それが姉妹に対する価値観なのか、自分に対する過剰な期待なのかは知らなかった
____
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9864 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/06(水) 00:18:16 ID:aT3RLT1w0
敗戦を飾った読書の秋が過ぎ、今度は長期休暇の冬が来た。もちろん、既に休みに入る前から予定は決めてある
書き初めと、絵だった。書初めに関しては全学年の宿題だが、これも良いのは展覧会に出品して賞が貰えるのだ
絵の方はと言うと、これはやるかやらないかは自由なので誰も手を付けたがらないので狙い目だと思ったから。
初日から、青年は街の図書館に足を運ぶと風景画の描き方と湖の写真集を借りてさっそく取り掛かった。
書道は毎日の積み重ねと判断して、一日10枚は書いた。親には無理を言って何度も用紙を買い足してもらった
_,,..-―‐-..,,_
,,-''" `ヽ、
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/ U .ヽ
,' l ヽ 今日も、ムリなの? 皆で一緒に神社で屋台とか……>
l ____l ヽ-―‐tイ''"´ ',‐-、
,-''"| `′ `′ .〃 .lヽ .'.,
| l'´.', ≡≡/ ヽ≡≡彡 ,' ヽヽ_ ごめん、ちょっと用事が……
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{ `''-‐"ヽ-..,,__ __./ ̄ ̄´ .,,..イ ∨
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| ヽ-、', / .ヽ // ∨
./ ヽヽ .', ロ `ロ ヽ、 / .∨
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無論、中学生に向けての勉強も欠かさない。小学校のテスト勉強もあった。
自然と、彼が犠牲にしていくものは増えて行った
9874 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/06(水) 00:25:36 ID:aT3RLT1w0
殆どを家で過ごすか図書館に通うかで冬休みが潰れる頃には、彼の手元には200枚近い書初めの紙と
10枚近くの水彩画が出来上がっていた。遊びもせず自分を縛り、冬休みの全て捧げた、彼の努力の結晶とも言えよう
学校が始まると同時に、絵と書初めの両方を先生に提出した。どちらも美術と国語の先生から素晴らしい出来だと褒められた
その言葉を聞いた青年の顔に、久しぶりの笑顔があった。頑張れと言われたことはあったが、褒められたのは久しぶりだ
今日その日、彼は鼻歌を歌いながら家に帰った。後ろの方から待ってーと友人の声が聞こえたが気にならなかった
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| (__人__) u. |
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9890 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/06(水) 00:36:50 ID:aT3RLT1w0
惨敗だ。屈辱的なほどに、彼の冬休みの努力は水泡となって消え去った。
書初めは、4位だった。1位は姉で、2位も妹だった。そして3位は姉が別ので出品した書初めで……自分のは花丸マークのシールが送られた
賞状も記念品も、全て姉妹に持って行かれた。
そして、あろうことか市の絵画展覧会の最優秀賞は自分の妹だった。青年のように塗り方から遠近法まで輪郭を意識し勉強した訳でも無い。
クレヨンで沢山の色を重ね塗りしたあと、そこに爪楊枝で削るように蝶々を描いただけの、幼稚な作品だった。光にすかせば
現実では有りえないようなカラフルな蝶々が絵に映るのだ……。そして……自分の絵は、賞を貰えるようなものではなく、選考外だった。
「お母さんに描いてもらったのかな? 駄目だよ、今度からはちゃんと自分でやらなきゃ……」
審査員の一人が、悪い子を叱る様な口調で青年に言い放った。自分のは、子供が書くのにはあるまじき作品だと判断されたのだ
そして、妹の、シャーロットの書いた絵は、独創的で子供らしい、素晴らしい絵だと偉く高評価だった。
____
:/ \:
:/ _ノ iiiii \. \
/ (○) (○) \
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/ ⌒ /⌒Y⌒ヽ ヽ
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|\ / 人 .\!
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その時、青年が感じたのは怒りでも無ければ悲しみでも無い。ただ、単純な寒気と感じた事の無い吐き気だった。
9912 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/06(水) 00:49:18 ID:aT3RLT1w0
そもそもの話、彼が姉妹と同じ家ですんでいるのが悪いのだ。何をしようにも、そこには家族の目がある。
彼が絵を描こうものなら、必ず姉妹が興味を引くし、自分も……と彼と同じことをする。
弟がやってるから書初めを頑張った。
兄がやってるから絵も描いてみた
彼がどう頑張ろうが、彼がどう手を打とうが……結果は、目に見えているのかもしれない
熱で倒れた青年が家で目を覚ますと、母親が心配そうな顔をして自分の看病をしてくれていた。
姉も妹も、泣きそうな表情で自分を見ていてくれたらしい。悪い夢かと思ったが、部屋から出てリビングに向かうと
隅っこにある展示ケースに、見覚えの無い新しい賞状が4枚と、何所かで見覚えのあるカラフルな蝶々の絵をみて
青年は分かった。あぁ、自分はまた負けたのか、と。ただそう考えると、力なくソファーに倒れ込んだ。
_ ‐  ̄ ̄ ‐
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. l !:l: : : :,' !:l: : :./ リ ソ ',l l
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. | 、 l: :/ .リ l/ l l .l
. | 、 i/ l.! l
結局、彼はこの小学校生活6年間で姉妹に一つも勝つ事も出来ずに、惨めな結果だけを世間に晒し続けたのだ
9936 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/06(水) 00:58:35 ID:aT3RLT1w0
あの忌々しい冬が過ぎ、二度目の春が来た。桜並木を歩く青年も、今日から立派な中学生だ。
……とはいえ、彼の周囲の環境は大きく変化しなかった。通う先では、既に二学年の生徒会の副会長として姉が在籍しており
学校行事でもたびたび司会として顔を出す彼女は、学校の中で大きな話題になっていたのだ。
成績優秀、文武両道、真面目な性格は教師の中でも偉く評判だった……10人中10人が振り返るという秀でた容姿を持つ女性
その弟となると、彼の学校生活は入学した人間全てから色眼鏡を賭けられた状態での、とてもハッピーな状況だった。
唯一の救いは、優秀な姉に引けを取らない素質と美貌を持った妹が同じ学校に居ない事だけだった。
……それも、来年までと言う時間制限つきの、ただの厄介な爆弾以外の何物にもならないが
__
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/ ヽ
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ヽ > 、_ , '二二 -―' -`ヽ
| {_ ___ /,イ三ヽ三三三三三‘ 、
〉 , 、_ //三三三三、三三三三三∧
r'二ニ、./, .'三三三三三 ,三三三三ニ∧
/三三/三三三三三三ニ,三三三三三∧
,'三 /三三三三三三三三!:三三三三三ニ∧
,-'- '´三三三三三三三三三,' 三三三三三三ニ!
/三三三三三三三三三三 ,ィ´ニ三三三三三三ニ|
/三三三三三三三三三,ニ‘ニ/三三三三三三三三 i
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二二二 ヽ:| |_」|/三三三三三{三三三三三三三三! i | 「 |
――― 、. |´! i/三三三三三 〉三三三三三三三ニ} :| | | :|
| ! i/三三三三三/三三三三三三三三ニ! . | | | :|
| |/三三三三三/三三三三三三三三三| i | | :|
何時の間にか、あまり口を開かないような人間になっていた。考えても、考えるだけで言葉には出さない人間にだ
9949 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/06(水) 01:07:53 ID:aT3RLT1w0
姉の評判は、小学校の頃から教職員の耳にも届いていたらしい。今日も美術の先生に褒められたと、夕食の席で誇らしげに語っていた
それにうんとも言わなければ答える訳でもない。ただ、適当な相槌を打つだけで、会話の殆んどから青年が抜け始めていた。
家族からの孤立化などと言うかもしれないが、すでに彼は孤立していた。小学校時代からの友人は殆ど傍から消え去って、新しい
友人との学園生活を謳歌しているからだ……羨ましいと思うと同時に、努力をしない馬鹿野郎とも、心の片隅で思い始めていた
それでも、青年が気づかないだけで、幼稚園時代からの友人は彼の傍で待ち続けていた。
いつか、彼があの頃の公園でのように自分達に仲良く話しかけてくるのではと、ずっと傍に留まり続けているのだ
それは明日かも知れないし、来週かも知れない。と、淡い期待を抱くだけで、青年の中では勉学と部活動の次の次辺りだったが
. --ミ __
. '::::::;ム '´ ー- 二つ
. イ::o:ο::/ ー- 二づ
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ヽ::::::::::::::::::::::::ヾ::\::::::::::::::::::、::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::ム-‐ ´ ヽ:::::::::::::::::Ⅵ
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└― ミ:x:}:::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::/ ヽ:::::::::l:!
`リ::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::∧ ゚,::: |i
「:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/::::::ー.、 ゚。::::|!
ノ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/::::::::::::::::::ヽ }:::/
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学年成績一位、新しく入った「陸上部」で、世界に結果を残す。これだけが、彼の中学校生活の目印であった。
絶対に負けられない。負けっぱなしでは、駄目なのだ。なにかで、それも同じ土俵で勝たなければ、それは負けなのだ
9971 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/06(水) 01:18:08 ID:aT3RLT1w0
その日から多忙な毎日が始まった。教科書が配られた時点で、全てに目を通し、予習を欠かさず復習は二個先まで何度もやった
小テストだろうが手を抜かない。全て満点でクリアファイルの中に突っ込むと、放課後は急いで部活動へ。グランドに出ると誰よりも
先に整備をしてから、顧問の先生に直接許可を貰って勝手に走り始めた。彼の専門種目は姉と同じく、長距離走。
運動は得意では無い。むしろ苦手だったが……他の部活動に目を付ける訳がない。種目もこれ一本だけ
「姉に勝つ。同じ種目で、勝てばいいのだ」
最早、小学校の頃の純粋さは一切消え去っており。心の中では嫉妬と羨望が動力源となって彼を突き動かしていた。
,,..-''"´ ̄ ̄"''-,,
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../ -‐t.j-`''‐ _,,..-.',
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l r''´ ヽ`゙'' |
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……努力すれば勝てるなどと言う戯言を、信じなければ良かったのに。青年は過去をそう振り返っていた
35 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/06(水) 01:54:26 ID:aT3RLT1w0
もちろん、青年もアホではあるが馬鹿ではない。相手は一年も先に陸上部を続けているのだから、その分の差がある
一日二日でその分を埋めれるはずがない……いまはひたすら練習に打ち込み、部活動を引退する三年の夏までに勝つのだ
それからほぼ毎日、土曜日も日曜日も練習に練習を重ね、陸上部に精を出した。午前は走り続け、午後は試験勉強
殆ど自由な時間など彼にはなく、唯一あるとすればそれはトイレに入っている時ぐらいだろう。それでも、頭の中では如何にして
姉に勝つ手段を巡り巡っていたのだが……
_. . :::::::::ー:::-..、.....,,,,,
,.イ:⌒:ヽ.,、<:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`:ヽ、
,.イ.: : : : : : : ヽ/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i:::::::::::::\
_.,イ.: : : : : : : : : :/:::::::::::::::/:::::::i::::::i:i::::::::::l:::::::::::::::::::'.、
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` ̄ ̄ ̄ ̄´ {/:::::::::::/::::::/:/′ /://:::::::::l:::メ、 ',:::!::::::::::::::!::ハ: : : : : : : : :
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/::::::::::::/::/,.ィチ圷ミ /:::/ /´ ̄`¨''' リヘ::::::::::::|::::!:::! `` ー- 、
/イ:::::::::/::/〃.ん::::ハ // / 斗-ミx, `l:::::::::::!::::lヘ| 最近は生徒会活動で練習に出れてないな……
|/こ)レリ { 辷しソ /′ '゙ん::::ハ ヾ l::::::::::j::::::! j
{ヽ ( } 、、` ̄´ {::しcソ } ヾ !:::::::/'i::;/ 記録が落なければいいが。
丶 ハ `¨´ /:l:::::/ レ′
,. <ヽ圦 丶丶 / )l:::/
\/|:::|ゝ丶 ' /ムj/
/:小:| \ - 、 イ::ヽ ←女子長距離走、県最高記録保持者
//'::::::| i丶 . < ::/::\:: ゝ
//{:::::: l ,. ― l ` ー ´ | __ 人{ヘ::く
{::| !:::::::| / ‘、.j j ハi 、ヾ:::ハ
Ⅵi: .イ:i ヘ. \ イ ./ i:`ヽ.ヘ::}
,. <c:::: | ヘ,. \____/ / |::::c:`' .、
. ィ::::::::::::/ | ヘ、 //仆、. / _ ト、::::::::::::`:: 、
f´ \:>''´ | ヾ./ || ヾ〃 /〃! |` <::::::/ ヽ
《 ヾ | _\,| /_, /〃 | | `ア ー》
{ ヽ ヽ .| _||  ̄ ∨_ ̄||_  ̄ | / }
. | ヽ |i_|| ̄ /::已ト :ヾ ̄ ||_ j| .′ |
. | /  ̄ く:/|::||::| ヽ::〉  ̄ ハ !
相手が才能のある天才という唯一の点を除けば、青年は彼女に勝てていたかもしれない。
48 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/06(水) 02:04:47 ID:aT3RLT1w0
i ,ィ ,ィ, , _,
ィi ,ハト,//|,イ'´|フ7ィ==/─‐-__
,」ト片| !| ! ,'./7//フ.=テ二_フ─,‐-
ニ=、ヽヽ!、ヽ| |' /,イ//'´=三二.`ニヽ
`フ _ン┴┴ァ, -┴┴┴ ニ二 三─=ニ、ヽ`
'厶ィ|! '/ \丶ニ、 ヾ` 5教科全て満点……すごいじゃないか、
7/イ ! ,' i丶、ヽ 丶ト
り }、、\` ト、! 流石は、次期生徒会長の弟と言ったところかな?
| ‐'"´ `` ´ ̄``丶、 彡トミ、ヽ l
ハ -ニ´ ─-ュ ` トミL_ 」
i,r}  ̄`ニjィ‐‐-r'´ にコ‐、 |if ‐、 !
_,,. -‐'!ハ`──'´i! 丶、__,ノ 〈.リ丿り.、
_,,.-‐'' ´ /`ヘ ::{ y'´ /i 丶、
_ ,.-‐ '''"´ ,' .i ` ` -、 ∠ニ'´ i! `丶、
/ ,' ヽ ー─‐---‐' ,' | 丶、
i i ト、 ‐- ,.リ,! | 丶、
. l ! | ヾィi, iャi i,、,;、i,ィ, -'´ ,' | `丶、
..! L_ /! ヾリ」ト!i」トi'´ ∧ | /丶、
.l / ヽ '´ ! ,イネ 入 ,' ヽ ノ / i、
i! | / |イ∥ ト__,/ ./ヽ, ,' \ '´ , ‐'´ /
! r'´ | i! / ! /./ y' ヽ , ‐'´ /
____
/ \ チッ
/ ─ ─ \ ……ありがとうございます。
/ (●) (●) \
| (__人__) |
\ `⌒´ ,/
/ ー‐ \
しかし、どれだけ学業で一番を取ろうが、どれだけ優秀な成績を叩き出そうが……自分の前には何処にでも姉の姿が合った
流石は彼女の弟だな。姉さんを見習ってるのかい? 本当に素晴らしい。 あぁ、そう言えば君は彼女の弟だったね、それじゃ、ある意味当然かな?
勉強、運動、規律、素行、なんでもかんでも、全てが彼女の姉と言うフィルターを通して見られてしまうのが、屈辱だった。
なんで前に姉の名前を出す? どうしてなんでだよ……。 口に出せない性格が故に、溜まった恨みの言葉が彼の身体を徐々に蝕んでいく
姉に勝ちたいという一心で勉学と部活に打ち込んでいるのに、自分が彼女に勝っているという証拠も実感も、何一つ出てこなかった
63 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/06(水) 02:16:53 ID:aT3RLT1w0
一方、彼の学校内の評判は……良いとも言えなければ、悪いとも言えなかった。
学業は「姉さんと同じく」超優良。運動では「姉と同じく」陸上部で新人戦の長距離走でも「タイムでは姉に数歩劣るけど」優勝、
と、一見すれば華々しく見えるかもしれないが……友人は幼稚園時代からいる数人だけ。「それに対して姉は一年生から三年生まで顔が広い」
容姿の方は、見る人からすれば充分整っているといえるかもしれないが、そうでない人からは「ガラの悪い奴」という判子が押されている
「それに対して、姉の方は部活動でも中心に居て、友好関係も広く、容姿端麗で……誰にでも……」まるで讃える様な声だ
教室での昼休み、端っこの方で一人給食を食べていると、何処からともなくそんな会話が毎日聞こえてきた。良くも悪くも目立っている彼は
毎日のように雑談のネタにされては、悪口とも褒め言葉とも言えるいじめを受けていた。本人たちにはそんな気はさらさらないのだろうが
友人は要らない、彼の中学校生活は「ただ勝つ為だけにある」のだ。
例え、その会話に先生たちが混じって自分の事をからかおうが、関係ない。そんなの分かりきってた事だろうが、と荒れる自分を宥めた
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そんな彼の後ろ隣では、幼稚園時代の友人たちがなんとかぼっちにさせまいと、彼に近い場所で給食を食べていた
64 名前:名無しのやる夫だお[sage] 投稿日:2013/11/06(水) 02:18:06 ID:pliN1bSY0
友人たちいい奴過ぎるだろ・・・・・・・・
65 名前:名無しのやる夫だお[sage] 投稿日:2013/11/06(水) 02:18:18 ID:hsERoMMU0
友人が健気すぎて涙不可避
男だろうが女だろうがええ奴すぎるやろ
66 名前:名無しのやる夫だお[sage] 投稿日:2013/11/06(水) 02:18:31 ID:QXXTK2d.0
友人達が天使すぎる……やる夫が友人と認識してるかは微妙だけど
74 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/06(水) 02:25:43 ID:aT3RLT1w0
さて、そんな彼の中学校生活一年目は、はっきり言って無意味な結果で終わったといえよう。
三学期すべての成績はオール5の満点。体育祭実行委員、文化祭実行委員にも所属、陸上部では数々の大会で一位だったが……
それでも姉のタイムは超せなかった。どんなに足を前に出しても、胸が張り裂けそうなほど苦しくても……彼女のタイムはいつも彼の
数歩先を悠然と走っていた。彼の一年目の努力は、全て実の姉の前には地に埋もれてしまい、なんにも輝かなかった
____
/ \
/ ─ ─ \
/ (●) (●) \ 週二の練習だけで俺のタイムより5秒速いとかフザケンナ
| (__人__) |
\ ` ⌒´ ,/ くそっ、くそが…………………くそっ
r、 r、/ ヘ
ヽヾ 三 |:l1 ヽ
\>ヽ/ |` } | |
ヘ lノ `'ソ | |
/´ / |. |
\. ィ | |
| | |
無事に二年目を迎えると、姉は三年生に進級。そして生徒会長へとほぼ満場一致で当選していた。
そして、青年にとって時限爆弾がこの学校へと迎える事になった
91 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/06(水) 02:33:53 ID:aT3RLT1w0
朝の自主練習から戻ってくる途中、校門から生徒玄関までの間に人だかりができていた。多数の新入生の輪の中には
愛しさなど既に抜き去って憎らしさもわき始めた妹の姿があった。
, / ; l 、 ),
,( / j{ |;ハ i ∧\
/⌒゚/ , /ヘ i: i | |_|_j_ ヽ
/. / / i :i:| _;.L.... |: :ル'"´|,ハ }` |〉 }
. /^I ; / ,.ィ:|⌒乂\ |i /リ _j_ }/ |iノ∧ いやー、ここが兄貴とお姉ちゃんが通う学校かぁー
. / :{ | | l l | ‐\ヽリ' -==彳 | :八 ∧
/⌒7 :l| | i i|ハ|-==‐'゛ )′ ノ^リ /l ∨;ハ 良いね、小学校よりいろいろあってさー
/ 八 | | ll } ヽ ハ:/ :| | i
. / / | | l|:、 从{ :|zU| |
j人 八___、 、 ' ..仏 )八i | |
. / ハ/ 丿 )>_ / / }:| |
. / . ;i / / / x‐─┤≧:.......,,_ .ィl/ /┐ | |
/ / ル : / / | 从 イ! |__j│
./. / / i jl /==7∧ i| {:/ / /{i├─| |ミト
/ | /|! / ̄ア/ ∧ _】 // / ∧{ | Ⅸ
. / //_彡ニア八/ ∠/_彡ヘク∧ _彡ヘ /⌒ヾゝ ノ丿
. / / _彡≦ィニア ⌒´ V/∧ ‐‐- 、 /∨{ // jリ
/ / 「{Ⅳ /_ア¨ i; ___彡 V/∧ Ⅴ _;彡 _、{
./ / V/ /¨ i; lシ V / \ `ミ (双丘\
i j iヘ l jリ 乂__//\ ; ` \ `⌒¨´
| l: /| |l∧ : i j; ⌒^ヾ{ `ヽ V/∧
| レ: | |\l\ V{ ;′ \ :. ∨/l|
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. ノ<\\\\\\\ _):.、 ハ:!丿__,;:
. / \\\\\\\\\ __)\ ヽ{{^
.〃C\\\\\\\\\\\\\\ _,;彡 } ‐≦
持ち前の明るさと、小学生のころから手先の器用さで一躍学校の人気者になっていたシャーロットだ。輪になるほどの
お友達と一緒に入学式へと来たのだろう……
彼の持ってない物をたくさん持っていても、もはや羨ましいとも思わない。今必要なのは、彼女たちに勝と言う事だけだった
…………一体何がどう勝てば終わりを迎えるかなど、既に彼にも分からなかったが。
105 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/06(水) 02:44:14 ID:aT3RLT1w0
そして、入学式が平穏に終わって数日。彼の安定してきた日常を見事に打ち崩すかのように一つの話題が上がってきた
「一年生のあの子、身体測定で2年の兄さんの記録を抜かしたってよ」
「あー、バルクホルン先輩の妹さん? たしか、お姉さんのと2秒差なんでしょ?」
____
/ノ ヽ、_\ r ⌒j
/( ○). (○)\ / / 2秒? は、ふざけんなよ……冗談じゃないぞ、おい
/ (__人__) \/ / / )
| u .` ⌒´ / / / /
\ / '` ´ /
r´ (⌒'ー―- イ′ ´廴
/ > 、 ヽ _  ̄ ̄ ̄)
/ -、 } (  ̄¨´
/ ヽ._ __ \
` --‐'´ `゙'
幾らなんでも、入ってきたばかりの妹には負ける事は無いだろうと、誇っていた陸上のタイムが簡単に覆されてしまったのだ。
まるで漫画の様な、夢幻のお話だ。ついこの間入ってきた奴に負ける? アニメで天才の主人公が微か数日で偉業を達成する
かのような真実に、思わず青年はその噂話をしていた二人組に突っかかった。
そして、それが疑いようも無い真実と知って、あの時の冬の様な不快感と寒気が青年を襲い始めたのだ
121 名前:
七色 ◆5yAzQ5rmCs[] 投稿日:2013/11/06(水) 02:55:53 ID:aT3RLT1w0
.  ̄ .
´ . . : : : : : : : : : : : : : : : :ミ .
/ . : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ : : : : . ヽ
. : : : : : : : : : :/. : : : : : : : : : ',: : : : : . .
/ . : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : . ',
/ . : : : : : :/ : : : : |: : : : : : : : : : : : i : : : : : .ヽ :,
/ / . : : : : : : : : : :/|: | : : : : : : : : : 小: :}: : : : : . ′ んー? ほら、あたし走るのとか好きだしな
. ′/ . : : : : : :| :/. :/' |: |: : : : : |: : : :|: | ’:|: : : : : : : i
. . : : : : : : : : : i |.:{. |: |∨.:|: .:|: : : :}_廴|:|∨ : : :小| それにみんなからも才能あるって言われるしさー
/ i : : : : :l : :斗七: | ̄:zU乂|: .:|: : :/{:/ .:|`ト.: .:|: }: ',
/ : |. :/|.: .:|: .: .:|:{,,斗≠ミ ヽ |: :/斗≠ミ } : : |: |: ∧ やっぱり陸上部入ってみようかな……
/.:/| : : , :|: : : 圦 トrイ} ` |:/ ' トrイ} }' 从: リ: |\∧
. /'′ 小:|.:∧:.:. : : :∧ V゚ツ '′ Vツ 〃:|:∧:ハ \ ほら、そしたら兄貴とお姉ちゃんと一緒に走れるだろ?
. j : : :小人:.: : :‘, , {:.:. /: .’
. : .:.:.| : : :\≧:ゝ 八}: : : :}
/ . .:.:.:.:. :|:. :.‘:込. ー ‐ イ |/.: .: :ノ
/ . .:.:.:.:.:.人|\: :.∨:个 . <.:.:. /. : /
/ . .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:≧ァ'/\ ≧ -イ{:.:.:|l.:.:.:/彡:. |
. / . .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:厶斗:彡〈. > _ ノ‘\l|:.:.:.:.:|:.|:. |
/ .:.:.r<千¨. 斗// ∧ /⌒∨ |丶 :.: |:.l:. |
. .:f´  ̄ // ∧ /////〉 |: \> ミ
. / .:小 \ 〈〈 ∧イ ヽー〈 N:. \≧…ソ 、
/ .://|:. ヽ. ≧ >/ ', ////} i⌒\ ≫ | i
/ '′/..:|:.. ∧:. < / ,{////| | \く .:| |
好きだから、才能がある、そこに努力の文字はひとかけらも無く、ただ純粋な身体能力で劣っていたのだ。
ふざけんな……顔が一瞬こわばったが、すぐに戻した。
いいじゃねぇか、絶対に追い抜かして勝ってやる。まけねぇ、ふざけんなよクソッタレ。
これ以上、自分が姉妹たちの劣化品だと思われたくないという一心で、彼はさらに練習に打ち込むことにした。
最初は、姉妹たちと一緒に並んで賞が欲しかっただけだったのに……何時の間にか二人を蹴落とす事しか頭には無かった
一緒ではだめなのだ、姉妹と一緒では……自分の方が優秀だという事を証明して見せつけないと。
ただ純粋に螺旋曲った対抗心と捻くりかえった嫉妬心だけが、孤独な彼を無理矢理に突き動かしていた……
今日はここまで……明日速いのに長くやっちゃった。
125 名前:名無しのやる夫だお[sage] 投稿日:2013/11/06(水) 02:57:18 ID:hsERoMMU0
乙
途中で寝るつもりだったのについつい最後まで見てしまった。友人たちが唯一の癒しでした。
126 名前:名無しのやる夫だお[sage] 投稿日:2013/11/06(水) 02:57:22 ID:IztLtTGg0
乙
あぁ、ガリガリ心が削れるなぁ
どうか心の底からの救いを望む
変に歪んだ奴じゃなくて
131 名前:名無しのやる夫だお[sage] 投稿日:2013/11/06(水) 02:59:24 ID:lBU0a/eo0
乙
132 名前:名無しのやる夫だお[sage] 投稿日:2013/11/06(水) 02:59:38 ID:UrHI0UcQ0
乙です。
鬱展開が好きですねー。
133 名前:名無しのやる夫だお[sage] 投稿日:2013/11/06(水) 03:00:08 ID:pliN1bSY0
乙
134 名前:名無しのやる夫だお[sage] 投稿日:2013/11/06(水) 03:01:09 ID:Fa/8JgEQ0
乙
明るい未来が見えてこねぇw